東京・上野の中心に広がる緑豊かな園内――そこには、世界中の動物ファンを魅了する「上野動物園」があります。日本最古の歴史を誇り、約300種もの動物たちが暮らすこの動物園には、ここでしか出会えない希少な生き物や、他では体験できない感動が詰まっています。
なかでも「アイアイ」や「ジャイアントパンダ」など、国内唯一の存在や特別な展示は、訪れる人々に驚きと発見を与えてくれます。今回は、上野動物園でしか見られない動物たちや、話題となったフォッサの現在、そして園ならではの魅力について、最新情報とともに徹底解説します。
あなたもきっと、上野動物園の奥深い世界に引き込まれるはずです。
上野動物園にしかいない動物は何種類?

上野動物園で日本国内唯一飼育されている動物は現在複数種存在します。最も有名なものはアイアイで、2023年時点で11頭が飼育されており、日本でアイアイを飼育する施設は上野動物園のみです。
また、ミミセンザンコウも上野動物園でのみ観察できる動物として知られています。有鱗目センザンコウ科に属するこの動物は、アルマジロと似た外見をしていますが実は別種で、外敵に襲われた際は身体を丸めて身を守る習性があります。
これらの動物が上野動物園にのみ存在する理由は、飼育の困難さと国際的な保護活動への参加にあります。特にアイアイについては、野生個体がマダガスカルだけに生息し、環境の違いなどもあり飼育が極めて困難であるため、国際的な連携による繁殖プログラムの一環として上野動物園が重要な役割を担っています。
まだフォッサはいるのか?

残念ながら、現在上野動物園にフォッサはいません。2024年3月26日に、日本国内で唯一飼育されていたオスのフォッサ「ベザ」が18歳で死亡したため、現在日本にフォッサは存在しない状況です。
フォッサは2010年1月16日に南アフリカ共和国の飼育施設から雌雄1ペアが上野動物園に来園し、2月から一般公開されていました。マダガスカル島固有の肉食獣で、マダガスカル最大の肉食獣として知られていたフォッサは、体長約70センチメートル、尾長も約70センチメートルで、マダガスカルマングース科の動物でした[8]。
2017年5月にメスの「アンバー」が死亡した後、ベザは国内最後のフォッサとして飼育されていましたが、誤嚥による窒息が死因となり、現在は日本でフォッサを見ることはできません。
フォッサは家畜を襲うことから生息地で駆除の対象となり、個体数が減少しており、現在は国際自然連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)に分類される希少動物です。
上野動物園ならではの魅力
上野動物園には他の動物園では体験できない独特な魅力が数多く存在します。これから3つの主要な魅力について詳しく説明します。
その1:歴史的価値と文化財
上野動物園最大の魅力の一つは、その歴史的価値です。1882年開園の日本最古の動物園として、園内には数多くの歴史的建造物が保存されています。
特に注目すべきは、1639年(寛永16年)に再建された国重要文化財の旧寛永寺五重塔です。この五重塔は上野動物園のランドマークとしても親しまれており、動物観察と合わせて日本の歴史を感じることができる貴重な体験を提供しています。
また、1932年(昭和7年)に完成した日本最初のサル山も重要な歴史的施設として現在も機能しており、下北半島産のニホンザル「北限のサル」を展示しています。これらの歴史的施設は、単なる動物園を超えた文化的価値を上野動物園に与えています。
その2:国際的な保護活動への参加
上野動物園は単なる展示施設ではなく、国際的な野生動物保護活動の重要な拠点として機能しています。特にジャイアントパンダの保護研究では、中国パンダ保護研究センターと共同でパンダ保護研究に取り組んでおり、日本で最初にパンダの繁殖に成功した実績を持ちます。
アイアイの保護活動においても、1999年からマダガスカル国立チンバザザ動物園との共同研究を開始し、2008年以降はマダガスカル野生動植物グループ(MFG)に参画して現地での保全活動を支援しています。これまでに計20回の飼育下繁殖に成功しており、絶滅危惧種の保護において重要な役割を果たしています。
さらに、ライチョウの保全活動では野生個体の精液採取を実施するなど、日本固有種の保護にも積極的に取り組んでいます。
その3:充実した教育プログラム
上野動物園では、1949年から続く教育活動の伝統を活かし、現在「うえのZOOスクール」として年齢別の体験型教室を開催しています。小学1・2年生向けの「ホネ・ホネ探検隊」コース、小学3・4年生向けの「自分だけの『おもしろ動物図鑑』をつくろう」コース、小学5・6年生向けの「飼育係のお仕事発見」コースなど、子供たちの成長段階に応じたプログラムを提供しています。
「飼育係のお仕事発見」コースでは、普段は入れない動物園の裏側で飼育体験を行い、アジアゾウの部屋の掃除やスマトラトラのエサの準備など、実際の飼育作業を通して動物飼育の理解を深めています。
また、小学校教員を対象とした生き物観察・採集法等のセミナーも開催し、学校教育への支援を通じて環境学習機能の強化を図っています。
上野動物園で一目見るべき動物一覧
上野動物園を訪れた際に必ず見るべき動物たちを、その希少性と魅力に基づいて紹介します。
世界三大珍獣
- ジャイアントパンダ:2021年生まれの双子「シャオシャオ」と「レイレイ」が西園の「パンダのもり」で観覧できます
- オカピ:「森のキリン」とも呼ばれる希少動物
- コビトカバ:2025年3月14日に13年ぶりに子どもが誕生し、現在4頭が飼育されています
日本唯一の動物
- アイアイ:マダガスカル島固有の夜行性霊長類で、現在11頭が「アイアイのすむ森」で飼育されています
- ミミセンザンコウ:東園「夜の森」で観察できる、日本で唯一の展示です
希少な大型動物
- スマトラトラ:国際的に保護されている絶滅危惧種で、「ゴリラ・トラのすむ森」で自然に近い環境で飼育されています[1][11]
- ニシローランドゴリラ:群れ飼育により繁殖に成功しており、親子の生活を観察できる貴重な施設です[1][12]
- アジアゾウ:緑と土の放飼場でプールでの水浴びや採食行動を間近で観察できます[1]
珍しい鳥類・水生動物
- ハシビロコウ:「動かない鳥」として話題の4羽が「アフリカの動物」エリアで飼育されています[12]
- ホッキョクグマ:「ホッキョクグマとアザラシの海」で水中での迫力ある行動を観察できます[1]
- ゼニガタアザラシ:ホッキョクグマと同じ施設で極地の生態系を再現した展示を行っています[1]
珍しい動物がいっぱい!
上野動物園は日本最古の動物園として140年以上の歴史を持ち、現在も日本で唯一アイアイやミミセンザンコウなどの希少動物を飼育する特別な存在です。残念ながらフォッサは2024年に最後の個体が死亡したため現在は見ることができませんが、世界三大珍獣をはじめとする約300種3,000点の動物たちが訪問者を待っています。
歴史的建造物と最新の飼育技術が融合した施設、国際的な保護活動への積極的な参加、そして充実した教育プログラムという3つの魅力により、上野動物園は単なる娯楽施設を超えた価値を提供しています。特に子どもたちにとっては、生きた教材を通じて自然への理解を深める絶好の学習の場となっており、大人にとっても野生動物保護の重要性を考える機会を与えてくれます。
年間350万人が訪れる日本一の入園者数を誇る上野動物園は、アクセスの良さと手頃な入園料(大人600円)も大きな魅力の一つです。JR上野駅から徒歩5分という立地の良さにより、気軽に希少動物との出会いを楽しむことができる、まさに東京の宝とも言える施設なのです。
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