土佐犬とピットブルは、ともに闘犬として名高い犬種です。それぞれ体格や性質に違いがあり、「どっちが強いのか?」と議論になることも少なくありません。
土佐犬は日本原産の大型犬で伝統的な闘犬試合で活躍してきた一方、ピットブル(アメリカン・ピット・ブル・テリア)はアメリカ原産の中型犬で無制限の闘犬競技(いわゆるブラッドスポーツ)で培われてきた背景があります。
本記事では、両者の特徴と強さを比較し、さらにピットブルを上回る強さを持つ犬種がいる可能性や、“最強”と呼ばれる理由について考察します。
土佐犬とピットブルはどっちが強い?
土佐犬とピットブルの強さを直接比較する際に重要なのは、闘犬のスタイルとルールの違いです。日本の闘犬は厳格なルールがあり、基本的に相手を力で押さえつけ、どちらかが吠えた時点で闘技が終了します。これは命を奪い合うものではなく、むしろ格闘技に近い形式と言えるでしょう。
対照的に、ピットブルが参加していた海外の闘犬(ブラッドスポーツ)はルールが非常に緩く、時には命をかけたデスマッチ形式のものもありました。犬が鳴いても逃げても、どちらかが命を落とすか、飼い主が降参するまで続けられるというものです。
この闘い方の違いを考慮すると、「どちらが強いか」の答えは状況によって変わります。
- 日本式の闘犬ルールでは:体格の大きさと防御に優れた土佐犬が有利
- ルール無用の闘いでは:戦闘に特化した身体能力と俊敏さを持つピットブルが優位
実際、多くの専門家は「ピットブルは土佐犬よりも闘争心が高く、ルールがない環境では強い」という見解を示しています。体格では土佐犬が圧倒的ですが、闘争に特化した身体能力と精神力においてはピットブルに軍配が上がるというのが一般的な評価です。
ピットブルより強い犬は存在するのか?
闘犬界で突出した存在とされるピットブルですが、果たしてピットブルよりも強い犬種は存在するのでしょうか?
「強さ」の定義にもよりますが、世界にはピットブルに匹敵あるいは凌駕するパワーや体格を持つ犬種が何頭も知られています。

ネット上の「強い犬ランキング」などで名前が挙がる主な犬種だけでも、ピットブル、ロットワイラー、ドーベルマン、ブルマスティフ、チベタン・マスティフ、オオカミ犬(ウルフハイブリッド)、グレートデーン、カンガール・ドッグ(カンガル犬)、土佐闘犬など枚挙に暇がありません。
これらの犬種はそれぞれ体の大きさ、筋力、闘争心や攻撃性など様々な面でトップクラスのスペックを持っています。特に注目すべき犬種としては、トルコ原産の護畜犬であるカンガール・ドッグが挙げられます。日本では馴染みが薄いですが、カンガールは「犬界のハルク」とあだ名されるほど驚異的なパワーを持つ犬種です。成犬の体重は50~64kgにもなり、大型のピットブルや土佐犬にも匹敵する体格です。
その最大の武器は顎の力で、噛む力は約340kg(約740ポンド)にも達しライオンに匹敵するとも言われます。さらに時速50kmで走る俊敏性と4.5トンのトラックを引っ張る怪力も兼ね備えており、総合的な“フィジカル最強”の候補としてしばしば名前が挙がります。カンガールのように闘犬として育成されたわけではない犬種でも、その体格とパワーで見ればピットブル以上と言える存在は確かにいます。
また、チベット高原原産のチベタン・マスティフも「世界最強クラスの犬」として話題に上る犬種です。熊や狼さえ退ける勇猛さと、体重70kgを超える巨体から繰り出されるパワーは伝説的で、「ライオンのような犬」と称されることもあります。
さらに、ロットワイラーやドゴ・アルヘンティーノといった闘犬系・狩猟系の大型犬も、対ピットブルで互角以上に渡り合える可能性がある犬種としてしばしば名前が挙がります。実際、ロットワイラーはアメリカでピットブルに次いで咬傷死亡事故件数が多い犬種との報告もあり(すなわち“人に対する危険度”ではピットブルに次ぐ順位)、それだけ攻撃力が高いことを示唆しています。このように、ピットブルより体が大きい・力が強い犬種は複数存在するため、「ピットブルが絶対無敵」というわけではありません。
最強と呼ばれる理由: 闘犬最強の座に君臨する要因
ではなぜピットブルがこれほどまでに“最強”と称されるのでしょうか。その理由として考えられるポイントを整理します。
要因1 闘争心と持久力(気質面)
ピットブルは闘犬として「合理的に作られた」犬種だと言われます。19世紀にテリア系の敏捷性と闘牛犬系の筋力・攻撃性を掛け合わせ、闘いに特化した選択育種が行われました。その結果、生死を問わない戦いでも最後まで諦めない執念と呼ばれる闘争本能を持つに至ったのです。痛みに屈しないどころか、逆に闘志を燃やしてしまう特異な気質は、他の犬種にはないピットブル最大の武器と言えます。闘犬競技において相手を制圧するまで闘い抜くこの粘り強さが最強と評されるゆえんなのです。
要因2 筋肉質な体格と顎の力(身体面)
ピットブルは中型犬ながら非常に筋肉質でバネのある体格を持ち、体重以上のパワーと機動力を発揮します。顎の噛む力も強力で、咬みついたら離さないというエピソードも数多く伝えられています。
専門家の間では「同じ大きさならピットブルより強い動物はいない」とまで言われることもあり、体格こそ上回る土佐犬相手でも俊敏性と噛み付きの威力で引けを取らないと考えられています。いわば小さな巨人のような存在で、自分より大きな相手にも果敢に挑む攻撃的なパワーは闘犬種随一でしょう。
要因3 歴史と実績
ピットブルが最強と呼ばれる背景には、その歴史的な闘犬実績も無視できません。20世紀初頭まで行われていた違法な闘犬賭博の世界で、ピットブルは数々の勝利を収め伝説的な存在となりました。強豪とされた他犬種との闘いでも勝利した記録が残っており、「無敗神話」のように語られる個体も存在します。
また、現代でもピットブルはその攻撃性の高さから各国で飼育規制の対象となっており、「危険犬種」の代表格と見なされています。
これは裏を返せば、人間にとって脅威となりうるほど戦闘能力が高い犬種であることの証明でもあります。こうした畏怖と畏敬の歴史がピットブルを最強たらしめている要因の一つです。
以上のような理由から、ピットブルは単に体が大きいだけでは測れない闘犬としての総合力で群を抜いており、「闘犬最強」の座に君臨すると評価されています。
おわりに: 「最強の犬」を考える上で大切なこと
土佐犬とピットブルのどちらが強いかという問いに対しては、一般論として「闘争本能の強いピットブルが優勢」との見方があります。しかし実際には個体差や環境要因も大きく、土佐犬にも圧倒的な体格差や鍛え抜かれた闘犬が存在すれば勝敗は容易に予測できません。
また、「強さ」の定義によって最強の犬種は変わり得ます。闘争心や攻撃性といった精神面の強さ、噛む力や体格といった身体能力の強さ、人に危害を及ぼした事例数といった統計的な視点など、様々な要素があります。例えば身体能力だけを見ればカンガール・ドッグが最強といえますし、人間社会への影響(事件数)という視点ではピットブルが最も警戒すべき犬種とのデータもあります。
結局のところ、「最強の犬」とは一概に決められるものではなく、見る角度によって答えも変わるのです。
最後に重要なのは、どれほど強い犬種であっても適切なしつけと管理によって安全に共存できるという点です。土佐犬やピットブルといったパワフルな犬種は確かに潜在的な危険性を持ちますが、その力は本来、人間と協調し有益な形で発揮されるべきものです。最強だ最弱だと議論するよりも、それぞれの犬種の特性を正しく理解し、責任を持って飼育することが大切だと言えるでしょう。
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